採血は空腹時でないとだめ?
暑い日々が続きますが、みなさま体調は大丈夫ですか?
ここ数年、夏の訪問診療は暑さがすごくて身に応えます(笑)
さて、健診もはじまりましたね。現在の健診では、採血は空腹時であることが実は必須ではなくなっているのです。知っていましたか? 今回は採血を行うタイミングについて説明したいと思います。
今までは、空腹時採血といって絶食時間を10時間以上とって採血することが必須となっていました。しかし、現在は絶食10時間未満のタイミングでとる採血を「随時採血」として認めるようになっています。ただし、空腹時採血がやむを得ずできない場合にとされていますが。
なぜ今回このような変更があったのでしょうか? そもそも。空腹時採血と随時採血では何がかわってくるのでしょうか? 一般的な採血のなかで、食事の影響をうける項目は実は中性脂肪と血糖くらいなのです。血糖は糖尿病があるかをみるためのものですが、実は健診の多くではHbA1cという食事の影響を受けない検査項目で糖尿病の有無を判断しているので、健診で影響をうけるのは中性脂肪くらいです。そして、今回の健診からは随時採血での中性脂肪の基準値が設けられるようになりました。空腹時は150未満が正常値ですが、随時の場合は175未満が正常値という設定になっています(食後の方が中性脂肪の値は高くなります)。専門家が診断や治療の標準を示すガイドラインでも現在は随時の基準が同様の値で示されています。随時採血での中性脂肪の基準が示されたことで、食事の影響も考慮して異常値かどうか判断しやすくなったということですね。
実は、ヨーロッパの学会が合同で出した2016年の声明では、中性脂肪が440を超えるなどある特定の人たち以外は絶食は必要ないであろうと記載されています。むしろ検査を受ける障壁などになってしまうのではないかとも書かれています。私自身、外来では、中性脂肪が非常に高いことがわかっている人以外の場合には、空腹時でなくてもよいというスタンスでいます(空腹時の血糖や中性脂肪の結果をみたいという方もいるのでそれはそれでよいと思います)。
採血に関してもですが、ひと昔前は常識と考えられていたことが、医学ではかわることが多々あります。
ちなみに、健診における当院の採血のスタンスは、行政からの推奨に従っています。つまり、基本的には空腹時で行うこととしています。ただし、うっかり食事を食べてしまった場合などは、随時採血として、「やむを得ない場合」として検査をさせていただくという形です。
12月まで健診はやっていますので、普段どこも通院しておらず、検査をする機会がないかたはぜひ受けてみてください。
文責:今永